パラララララ…
北街かな

雲から降下してみたけどパラシュートが開かないよ

だいすきだった人形を捨て 騒がしい街にさよなら
必死の両手も振りほどき
過去の夢には 泣いてすがって

霧の兆しに合図する手を排ガスに感染させたまま
闇夜の海に水没したんだ
すべての影を引き連れて 夢魔になり
浮かんでみせるために

見知らぬ変異が音素だけで構築されたまま
月の直下にあらわれている
線香花火が土に生え 無縁仏に添えられたまま
ひとつさみしく燃え立ちすくむ

雲から降下してみたがパラシュートは開かなかった

月見の花がそよいでいる
研ぎたてのナイフみたいな風のなかで
こころとからだのばらばらになる時刻を知ったんだ

宅地の電源をてのひらで押しこんで
あらゆる騒がしいひかりが黙っていく、この夜に
ただ 聴いてみなよ
兆す音を

うなずきの動作でそっと、誘いだしながら

点から降下してゆくにんげんの
パラララララが途絶えてゆくよ

しがみつくその手に花咲けば
ゆびの先から種子もこぼれた
この瞬時に
誰にも見られず
かなしい人形を捨ててみせるよ

たちのぼり、ゆらり、林間に潜む影となり
人心見知らぬ闇となれたら
ゆっくりと停止線が開いてゆくのを見るだろうから、
出来るだけ
そっと浮かんでみせる


自由詩 パラララララ… Copyright 北街かな 2009-07-27 14:42:54
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