神は檸檬の匂いがする(完全なるフィクション)
ゆりあ
空は灰色あたしの心は黒と青の混ざった澄んだ群青色
キリストは人類の罪を背負って十字架に張り付けられた
兄は私の服を乱暴に脱がし水色の下着一枚だけ残して「ほら、神にお前の体を捧げろ。毎日祈るんだよ。」と言って私の顔を見つめた
それで古くて重そうなカメラを持ってきて私の体を撮る
私の上半身は完璧だ
兄の後ろに全身鏡が有りちらっと自らの造形物が見えた
色と艶、形…胸の大きさはは左右で違っていたし決してサイズも大きくはない
でもそれが美しいと思う
自分でもうっとりするくらいに私の体は美しかった
肌は透ける様に白く張りがあり、胸は柔らかくしかも弾力がありそうだ
つんと尖った乳首は桃色に染まっている
私は自分の首に下げてある十字架のネックレスをぎゅっと握りしめた
「ねぇお兄ちゃん、イエスはマゾなの?」
くだらないけど前から思っていたことを訊く
「さぁな。マゾかもな。」
兄は構わずシャッターを切る
私はなぜだか神聖な気持ちになり少しも抵抗せずに背中をちょっと沿って、得意げに体をカメラに向ける
安物のロザリオが銀色の人工的な光を放つ
しばらく写真を撮った後空がまるでカメラのフラッシュのごとく数回光り地上に鋭い稲妻が落ちた
私は力が抜けてガクンとだらしなく跪き意識を失った
後日出来上がった写真を二人で見た
兄は写真を見て「死ぬほどきれいだ」と言っていた
私達は神との秘密の約束を守り続けるの
7月の夜に檸檬の匂いがしたら
それは神が近付いてきた証拠だよ