黄金
熊野とろろ


草の葉がこすれ 香る
小さなからだを 大きく横たえ
突き抜ける空を眺めた
輝く太陽が おれの目を細くし
やがて 真っ白な世界を作り上げる
すべてがひとつにでもなったかのような
幻の時間であり 空間だった

夕焼けはあらゆるものを飲み込む
おれはあの広大さを失った
大切だった空間が 時間が
あの夕焼けに飲み込まれたなら
この胸に悔しさは積もらない

歩き続けて この街まで来たが
一度だって 夕焼けを見たことはない
おれは迷い子か
道の端で小さく 冷たくなっていく
使い回しの夜が明け 細い息をする



自由詩 黄金 Copyright 熊野とろろ 2009-07-26 09:40:54
notebook Home