まぶたから
木立 悟






まだらに重いまぶたの道
雨の折り目
額のしずく
まぶたの奥を巡る音


まばたきのたび
出ようとするもの
入ろうとするものが
宙に光の柱をつくる


ひとつ 手が
額を まぶたを押し
そのまま空へ消えてゆく
音の無いかたちとつらなり


首のまわりを巡る輪が
羽と蜘蛛をくりかえす
黒と黄の鳥
曇の奥の背にとまる


終わらぬ壁が野に終わり
星は水へ水へ傾く
暗がりはちぎれた糸になり
かがやきつづけ うねりつづける


夜のうしろにも水のうしろにも
魂の着ける場所は無い
ただ音だけを食べ
透りすぎる


地には横の 空には縦の応えがあり
応え応え 応えつづける
夜のむこう 帰り道のうしろ側
応え応え 応えつづける


雨のはざまを埋める粒
ひとつひとつ音を映し
音より速く沈む羽の
明るさのふちどりを見つめている


草の針が手をつらぬき
花は内に肉に咲く
曇の奥の 鳥に満ちる背
どこへともなくすぎる魂


天を指差すひとり言
曲がり角に光る夜の布
風も無く音は吹き荒れ
高みへ昇る指紋に響く


まぶたに乗る手がひとつ増え
指先分の朝を見る
水に浮かぶ花 色の無い粒
音を持ち去る鳥を聴く


まだ誰も と言いかけて
ふと空と地の境界を見る
唱の曇が 指の曇が
次の季節へ遠去かる




















自由詩 まぶたから Copyright 木立 悟 2009-07-24 18:13:31
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