くたびれた男
熊野とろろ
くたびれた男よ
お前は目の当たりにする
きっとそうに違いない
異国の空の下で渇ききった老人が言う
くたびれたと
くたびれた男はさらに
若しくは焦がれていた本音を同じ言葉で漏らす
僕は想う
―それは太古の昔から
毒ガスが充満しきっている
ハスキーの女はブルーズを唄うか
阿婆擦れは自発的に股を開くか
冷笑されてなお
お前はお前でいられるか
くたびれた男
青い海
故郷の空
流した鮮血
風景化したいつかの朝
窓
愛する人の涙
悲しき鏡
誰かの偽りの夢
ルーツ
それぞれに
愛が存在し
僕らはそれらをひとつひとつ踏みつぶすところ
深く考えたけど
指一本触れずに彼らをバラす方法を
僕は詩以外に知らない
くたびれた男よ
お前はくたびれてなどいない