くたびれた男
熊野とろろ


くたびれた男よ
お前は目の当たりにする
      きっとそうに違いない

異国の空の下で渇ききった老人が言う
くたびれたと
くたびれた男はさらに
若しくは焦がれていた本音を同じ言葉で漏らす

僕は想う
       ―それは太古の昔から
毒ガスが充満しきっている
ハスキーの女はブルーズを唄うか
阿婆擦れは自発的に股を開くか
冷笑されてなお
  お前はお前でいられるか


くたびれた男
青い海
故郷の空
流した鮮血
風景化したいつかの朝

愛する人の涙
悲しき鏡
誰かの偽りの夢
ルーツ
それぞれに
愛が存在し
僕らはそれらをひとつひとつ踏みつぶすところ

深く考えたけど
指一本触れずに彼らをバラす方法を
僕は詩以外に知らない

くたびれた男よ
お前はくたびれてなどいない



自由詩 くたびれた男 Copyright 熊野とろろ 2009-07-24 04:16:41
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