夏をかう
ことこ

通りゃんせ、
通りゃんせ、と
いくつもの輪くぐりが待ち構える
手前の
軒先で降りしきる雨粒に濡れてから
久しい


地上を
すべらかに滑る
つめたい乗り物も
ときおり
思い出したかのように降る
なまぬるい夕立も
すこしずつ
削ぎ落とされてゆく
ものだから


    ((ぱたぱたと
     ((ひらいては閉じる花火を
      ((追って、

          どこまでも、ねむりの底へともぐってゆけば、肩口にひろがるうみの、うちがわからあふれてやまないこどうに、いまでも、たどりつける気がするから、夜光性のくらげにつれられて、乱反射しながら、みをすぼめたり、ふくらませたり、したりして、ふかくふかく、ひかりの届かないところまで、たどりつくために、できるだけ息をとめていられるようにって、できるだけ水面からとおざかれるようにって、それだけをただ、ねがっていた、はずなのに、


                   やわらかい夜空は))
                      たやすく))
               なにもかも呑み込んで))
                    しまって))


            しまいこんで※


浴衣の帯の締め付ける
すこやかさに支えられて
綿菓子だけでは
すこし
手持ちぶさただから
嫌いだった
林檎飴も
買ってみたりする
そんな夏がきました


自由詩 夏をかう Copyright ことこ 2009-07-23 21:07:14
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