鎮魂
竜門勇気


アベフトシにささげる
あなたは僕の青春の多くの時間を奪った
僕は奪われてもなお満たされているという初めての経験をした



小さなテーブルに
ショットを置いて
安物のタバコを
一人でふかした

うつむきは
冷たい角度で
世界中の花束に落ちる
寝すぎたよ
つか
起きすぎたのかもしれねーよ

今 缶詰めは
今 缶詰めは
今 缶詰めは

からっぽだ
死んでいる
死んでいる
小さなテーブルの上で
追憶が死んでいる

生活は
爪あとのよう
思い出すたび積み重ねた地層は崩れる
うつむきは
浅い角度で
痛みだけ残して消えた

あのころ
朝から晩まで
真似してギター弾いてたっけ
言葉もないよ
ぐつぐつ体中を這い回ってる
この不安だけが続く

からっぽのまわりを
何が囲んでるんだろう
鬼なんかじゃなかったよな
あいつなんかの話
嘘だと知ってたよ
鬼がロックを愛したりするもんか

追憶に混じって
太陽の演奏が聞こえる
世界中のステレオのなかで
ロックキッズがわめいてる

また天国の演奏家たちの
ハードルは高くなったな
虹の向こうから
ロックンロールの演奏が聞こえる
今日ぐらいはでかい声で泣かせてくれ
虹の下で
ロックキッズがモッシュしている

今 テレキャスターが
今 テレキャスターが
今 テレキャスターが
ああ 一斉にふりむく
電気仕掛けで
はじけて笑う はじけて笑え

追憶が混じって
太陽の演奏が聞こえる
いつかのキッズたちが
最後のモッシュを送る
どこからか聞こえては消えていく
色干からびた空を 焼き付ける

ほんとに今までありがとう
おやすみ


自由詩 鎮魂 Copyright 竜門勇気 2009-07-23 02:23:14
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