循環
月焦狼

何も期待するな
自分を憐れむな

いじけるな


喪失は、いつも唐突である。
失うものは大きく、得るものは少ない。
時は突然私から大切なものを奪い去り、そのことに気づくことができたとしても、ただ呆然とする以外に術がない。
失わぬよう必死にしがみついたところで、気づきえぬ背後から時は忍び寄り、無情にむしり取ってゆく。
時の女神と幸運の女神の後ろ髪はとても短く、三日月兎のように足が速いといったのは誰だったのか。

サーカスは何処からともなくやってきて、どこへともなく消えてゆく。
旅の行商人はどれだけ長い間商売を営もうとも、どの村に所属することもできず永遠によそ者のままである。
一つ所に落ち着けぬものは、縛られない代わりに守られもしない。
辺縁にひっそりと庵を結び、村に属さず、かといって、完全によそ者になることもない。
境界には魔物が住み、富と恐怖を齎す。
辺縁に住む者は、境界を司り、時に富を、時に災いを招きいれ、どちらの時にも感謝されることもなく、ひそやかに差別を受けるのみである。
異端を受け入れられるものは、己もまた異端とならざるを得ない。

持たぬものは失わず、希望がなければ絶望もない。

それでも、喪失は絶えず繰り返され

明日になれば、
また
陽は
のぼ




自由詩 循環 Copyright 月焦狼 2009-07-22 23:24:52
notebook Home 戻る  過去