ふたり
石瀬琳々

陽は斜めに射して蜜蜂が群れる
垣根には今年も薔薇が咲いた
みんな二人だけのもの
手をつないで小径を駆けてゆく


ぼくたちは (わたしたちは)
村はずれにひとつの廃屋を見つけた
秘密の隠れ家だと一目で知った


   かくれんぼうをしようよ
   ぼくは (わたしは)
   とてもうまく隠れられる
   さあ 目をつぶろう


破れ窓からきらきらと埃が踊る
黙っていても二人には同じものが見える
ここは王国
窓の外を兔が駆けてゆく


   *


ポケットには甘いキャンディー
口に含めば大人にも子供にもなれる
でも とても勇気が必要だろう


   さあ 指を探って
   ぼくは (わたしは)
   いくつになった
   あれから何年たった


大人になれば目に見えると思っていた
ずっと一緒にいられると思っていた
大切なこの気持ち
トイードルダムとトイードルディーのように


   *


   ねえ 目を開けてもいい?


それから それから 返事を待ち続けて


Darling ぼくたちは (わたしたちは)
何かを恐れて今も目を閉じたまま
肩寄せ合ってあの廃屋の中で


同じ微笑 同じまなざし 同じ声で笑う
同じ時間を生きている物語
そうさ みんな二人だけのもの
あの小径をもうすぐまた駆けてくる




自由詩 ふたり Copyright 石瀬琳々 2009-07-22 13:47:26
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