首筋
たもつ
タンポポを一輪だけ摘む
何も知らない貨物列車とすれ違う
水のように冷たいものを売っている所はありませんか
と、男の人に聞かれ
あっち、と指差す
あっち、に何があるのか行ったことはないけれど
もしかしたら親切な人が
必要なものを売ってくれるかもしれなかった
会わせたい人がいるの、
母は出掛けに言った
これから何度寝て
何度目が覚めても
決して会えない人たちもいるというのに
人気の無い瓦礫らだけのところで
タンポポの火葬をする
時おり吹く風と茎などに残る水分とで
なかなか火はつかないけれど
根気よく続ける
タンポポの火葬なんて
単なる思いつきだった
ただ、母も、母が会わせたい人も、
もう会えない人たちも、さっきの男の人も、
そして自分も、
嘘をつくときは
どうして申し訳なさそうな顔をするのだろう
気がつくといつもの癖で
首筋のあたりを掻きむしっている