愛よ
あ。
愛よ
おまえは道端の石ころみたいに
でしゃばりもせず佇んでいる
それは
太陽の光をたくさん吸い込んだ布団
使い古して先の曲がった万年筆
おどけた瞳を持った豚の貯金箱
愛よ
それは
カブトムシを捕まえていた庭の老木
校庭の片隅に並べられた朝顔の鉢
雨上がりの空を覆うような入道雲
触れ合える、ことに
感謝の、こころ
それは
卵の特売が書かれたスーパーのちらし
ふわふわの親子丼とデザートのアイス
腕の中でうたたねするひととき
愛よ
ぬるかんのお酒が美味しいように
低音の足湯で汗をかくように
熱さに身を焦がすこともなく
日々まどろんで漂っているわたしを
おまえは許してくれるか
こんなわたしであっても
少しはおまえを知っていると思っても良いか