小説『石川少女』
オイタル
東の山でテロルがあった
火のないところに煙がたった
晩秋の寒さの中ですぐに鎮火したが
不審火は続く
人気のないところからも自然発火する
空は雲を重ねて黒く笑った
風は目を光らせて時を伺う
犯人は
東の山の若い杉の木だった
自焼テロ
冬のあまりの寒気と
捨てられてしまった里山に対する絶望から
木々の過激派が自ら発火し
大規模な山火事を計画した
風の助けを借りながら
枝を震わせて意思を伝え合う杉の木テロリストたち
テロリストをかばい
ひそかに計画を助ける
山を追われた狸やカラスたち
山の動きを察知した市役所は
大規模な森林の伐採を計画する
木々のテロルを助け
土地を火の海にしようともくろむ謎のコンビニ店長の蠢動
こぼれた木の小枝を
拾って歩く背の高い村人たちとともに
冬の林の木々を救うため
一人の少女が立ち上がる
「テロリストの悲しき心を知る」少女の
さびしい戦いが始まる