夏祭り
within

猥雑な人の群がりを かき分けて
もう黄昏も過ぎ 日の落ちた道を
母と歩き続ける


露店の賑わいに 目を奪われながら
境内を目指し 参道を歩き続ける


子供の頃は 参ることよりも
露店のカキ氷や 金魚すくいが
楽しみだったのに 今では
まずはお参り と言っていた
祖父の言葉が 理解できるように
なった


一年の無事を 感謝する
そんなことを 思うようになったのは
生き難さと 有り難さを
わずかばかり 知ったから


祭りになると くれた千円で
夏の喜びを 教えてくれた
祖父も 祖母も
もういない


僕はもう お賽銭だけ握り締め
また一年を お願いする


大きな花火が 打ちあがる
今年も夏が 訪れた
家には 老いた父が
ひとり待っている



自由詩 夏祭り Copyright within 2009-07-18 21:54:57
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