青の発声【純色青色Escape-Ⅲ】
北街かな

友の消息を求めるサイレンが反響し止まない
密室はすべもなく断絶を良しとして朽ちて次第に崩れる
手紙は送り返された

暗黒の結末を呑むならば
壁の背後が良いだろう
焦げ落ちる日暮れが似合うだろう
私に言える言葉など
そんなものは消えうせたのだ

敗北せる隣街から栄光の市街地までを貫く
純白のラインに寝そべって
誰かも、きみも、泣いているだろうよ
精神が音の速度を超えても
このエリアを越えられはしない

子供たちの食肉処理速度には公共修繕事業も間に合わぬ
肥え太った彼らは自重で亀裂に堕してゆく
有罪の母親は泣き崩れ
シャウトだけで国道は濡れてゆくのだ
短い人生とは言え
生きていたとは言えぬ死体がそこらじゅうで腐りはじめる

しかし彼らの高級な鍵には息を飲むしかない
時刻と日付のロックを外して万象の身元証明をやり遂げる
恐ろしい時代が到来したものだ

高速で飛んでくるナイフとペンとキャンディとアゲハ蝶をすばやく避けながら
私は今を理解しようとしたのだ
手足は深刻な痛みを伴う
感覚は総じて凍結している
私はやはり何もわからぬ
安らかな日向が恋しいばかりだ

手を掲げ、透かして確認しろ
光の意味を読み上げてみせるんだ
対応した歌があるなら
そこで歌えばなお良かった!

人はみな、私の杞憂を流行の憂鬱病と診断して隔離した
見事に全身をうちほろぼされながらも
私には声も手段も残った
ラフにクールに台無しに、エッジを澄ませて
青色吐息をナイフとペンと蝶に変える
さあ、すばやく避けて見せたまえよ!

回避しないでくれ などと
言葉を、聞いてくれ、などと
私に言えるのか?
蝶が光の速さを超えても
痛み知らずここまで会いに来ておくれ だ などと
歌えたならばきっと良かった!


自由詩 青の発声【純色青色Escape-Ⅲ】 Copyright 北街かな 2009-07-18 16:45:29
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