雲海
夏嶋 真子
星は瞬きを禁じられ
月は白む空に輪郭を透かす
夜が死に
朝が生まれ落ちるまでの
混沌と森厳に漂う
四海の色を数える頂
一瞬は濃淡により誓われ
時は不動のまま移ろう
雲海をおよぐ魚
背には錦の海図を光らせ
銀剣草の所在を示す
しなやかな刀剣を引き抜き
囚われの湖を満たす
雲彩の宝器を破砕する
萬を塗りかえる暁光
再生される自我の中
地上が現今を手にした時
瑞雲の海原を住処とする
蝶達の抑揚が繻子となり
あまねく世界を包みこむ
始まり続ける空が始まり
その下を歩み始める者の影は
絶え間なく創生を歩み始める
残照に死すまで