a fair, brown, trembling woman
月乃助


いつか やってくると
願っていた
ゆめみた ガラスの靴
わからずに 足にすれば 先があると
いきつけると 信じていた そんな
昔話が揺らぐ あたしの
街のかたすみ靴物語り
      
      * 

心待ちしていたように
誰かが差し出すのを
数知れない人と日と夜のなかで じっとしていた
極東アジア人種のあたし
小さな港街の 白い人の巣くう王国


優しく 笑う それは、
無垢な 透きとおるガラスなんかじゃない 
の に、気づいてた
つま先は、赤
まんなかは、白
踵と裏は、緑 の少女のような 色靴
何人もの女達が試した つかれに
くったりする


あたしなど はけない 小さな靴
が、次の 可愛い女をまっていた 朝
きみが 笑う だから、あたしは
どうして も 
とめられなくなる


つま先を 切り取って
靴をはいて たちあがる
ぴったしの それに きみは もっと
優しくだきしめる から
あたしは、せいいっぱいの
微笑をかえし
顔をよせる


血はいつか
靴を真っ赤にそめるのに
ポリエステルの 白いドレスで
にぎやかな街に 出かける、
よろこびに
しゅくふくに
選ばれた 当然の顔をして
いたみは しあわせに こたえてしまう



血まみれの 靴を 暖炉にあぶりながら
靴をはくべき ほんとうの主人の
ひとりさびしい
ゆがめられた 女を 手に取り
あたしは おろかに
振るえながら
いつまでも
靴が かわくのを
まっていた 

      *

せつないほど すがり かけだし
追い越したくて
追い越したと思った昔話 のように
あのとき
それが、そうだと信じていた
もう けして
戻れない のに 
赤く染まった 靴を はいてしまった日
の、靴物語り


自由詩 a fair, brown, trembling woman Copyright 月乃助 2009-07-17 10:34:29
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