微笑む理由(dark horse)
こしごえ
ふりしきる、ふりしきるうるわしき影
原始の暗黒をつらぬいて
虚空の黒雨の冷たさは
墓守漂う雲のおとす
あふれる今朝を、幽かに青く息も吐く
並木道に風光りやがて歩む
無辺の肺臓澄みわたり
自動車よ私を通りすぎる?
いつも
意識不明のおもひ出に照らされている
ある正午、公園のブランコに老人がひとり
それはそれは静かなまなざしであった
この日は、本当にひと気はなく
真白の白髪日向ぼこをしていた。
鳩が五羽ほどうろついていたが、
縁もゆかりもない憧憬。
公転すべき水の惑星よ
銀河瞬く
暗黙で
星星の、回帰するメリーゴーラウンド
放て遊星を
黒い馬のいななき立を 変換する絶対音感
いみじくも
雪原をただ一頭疾風迅雷となってゆくたてがみ
約束のないすべてから発生した闇に
ぽつり、濡れた光点が忍び音をひそめている
宿無しの蔓
黙殺された光合成
グリズリーの失笑 いさめる九人在るミューズの母
舞台裏の道化師
銀糸の照明があたる密林
春を待ち尽す青年の
翳りある、指先がふれようと
空を切る、純白の肌へ。
おもひ出の下弦に
(限りある朝を
今日も初めてむかえる
在りしながら おもひありく)
この死はいちどきりしかして
ふりそそぐ高い空 をえる
流水の果てに(つむり手をあわせる私)。
宝石箱の中原から
こんにちは、とブラックオニキスの原石が、ひんやりと零す黒光り
あのひとみは、金環食の門
をつつっとくぐりぬける海馬の群星