強い陽射しに溶け出したシミ
涙(ルイ)

ドーナツショップは今日も混み合っている
女子高生はイヤホンで耳をふさぎながら
ケータイをしきりにいじくってる
若い母親は子供をあやしながら
育児雑誌をめくってる
バイトの女の子たちは絶えない客足に
それでも笑顔を忘れないでいる
そうしてあたしはといえば
一杯150円のアイスコーヒーをストローでかき混ぜながら
窓の外をぼんやりと眺めていた



絶え間なく流れる人ごみを避けるように
ベンチで寝そべっているあの老人は
一体いつの頃からそうしているのだろうか

彼にも親がいて兄弟姉妹がいて
守るべき人のために汗を流したこともあっただろうに

行き交う人々は 誰もあの老人を避けるように
足早に通り過ぎていくけれど



あの人々を あたしは責められない
あの老人を あたしは直視できない



きっと 誰のせいでもない
誰も悪いわけじゃない
そう思わなきゃやってられない

誰だってさ 好きで悲しみを背負ってるわけじゃない
いつの間に背負わされて降ろすことも許されず
だから仕方なく抱え込んでるだけの話じゃないか

誰だって幸せになりたいのは同じじゃないか
いつの間にか選んだり選ばされたりしてきた道が
いまの自分にたどり着いてるだけの話で
それが間違いなのか正解なのかは
誰にもわからないし誰にも決められるわけがない




考えたらたまらなくなってしまって 
胸焼けしそうな思いを必死でこらえながら
ただひたすら
薄くなったコーヒーをすすったんだ


自由詩 強い陽射しに溶け出したシミ Copyright 涙(ルイ) 2009-07-12 23:50:22
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