ロアン
氷水蒸流

雨が降る
丘に埋められた木の実の底に
たゆたう森を燃やすために

ほつれた右目から
麦の穂がゆれる
ぼろぼろの人形をくわえて
金網をくぐる裸の猫に
背中にゆれる麦畑に

ちぎれた腕に咲く花をちぎり
きみの髪に飾るために

打ち寄せる暴力の皮を剥ぎ
ささくれた腕のなかへ
やさしく抱きとめるために

新しい音階を試すように
天国へ下る裏道を爪弾き

雨が降る
赤く錆びた空の胸元に



自由詩 ロアン Copyright 氷水蒸流 2009-07-11 23:35:31
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