野原を歩いていた
深い霧の中を
ひとりで歩いていると
子供の頃に飼っていた犬に出会った
犬はうれしそうに
ペロペロと私の手をなめた

野原を歩いていた
私を呼ぶ声がしたので
振り返ると
若い両親が立っていた
ニコニコしながら
何かを言っていた

野原を歩いていた
にぎやかな声が聞こえるので
近くに行ってみると
小学校の授業中だった
友達がみんな手を上げていた

野原を歩いていた
一軒の見覚えのある家が
見えてきた
中に入ってみると
ひとりで書きものをしている
子供がいた

子供はずっと前から
私を待っていた
私がこうして訪ねてくるのを

あの日、部屋の窓から
夕暮れの空を眺めながら
子供の私は遠い未来の私のことを
思っていた