つきあそび
あ。
きれいに舗装されていない夜道は
鳥目のわたしには危なっかしく
雨上がりであることも重なって
慣れた道なのにつまづいてしまう
自動販売機にコインを入れ
ミネラルウォーターのボタンを押す
がたんとした音を合図に腰を落とし
取り出し口に手を突っ込みかける
気配を感じて視線を少し斜めにすると
昼間の雨で出来たらしい水たまりに
月がひとつ、落ちていた
どうしてこんなところに落ちている?
会ったことない神様の落とし物か
自分で好きこのんで落下したのか
いやいやそんな大そうなものではなくて
ここを通学路にしている女子高生の鞄に付いた
キーホルダーか何かかも知れない
だって、こんなに小さいんだもの
手をぐんと伸ばせば触れられそうで
でも拾ってはいけないもののような気がして
きっとこの水たまりが乾く頃には
誰かが戻しておいてくれるか、それとも
自分であるべき場所へ帰るだろう
やっと取り出したミネラルウォーターは
すっかりぬるくなってしまっていた
歩きながらふたを開けて一口飲んで、つぶやく
あの月に名前をつけるの、忘れてた