たった一日の航海日誌
遊僕民

今朝早く 
あてもなく船を出して 
気がついたら周り360度 
水平線の包囲網
コンパスを見てなくて
帰る方角もわからなくて
途方に暮れて帆を畳んだ
とりあえず錨を下ろした
 
これからどこに向かおうか
命を繋ぐものならある
だけど目的地が見えない
眼にじゃなく心に
 
またあてもなく
風に流されてみようか
夢見てる間に
どこかに流れ着いてるかもしれない
錨を揚げるのを忘れて
帆だけ張った

風と海底の綱引きに
船をギシギシ軋ませながら
少しずつ進んだ
確かめるように走る様は
不様だった
 
陽も高くなり
暖かい風に吹かれていると
どこかに向かう船を見た
大きな帆に風を集め
波を切り裂き走る様は
かっこよかった

彼らを水平線の彼方に見送り
自分はのろのろ進んで
もうどのくらい経っただろう
夕陽が航路を照らし
月が顔を覗かせていた
 
今日はもういいや
錨を下ろそうとした
その必要がなかった
間抜けな自分が嫌になった
うちひしがれるままに甲板に倒れ込んだ
陽も落ちてないのに眠りについた
 
夢を見た
宝島だ
お金じゃなくて
心にとっての
 
先人達が多くの伝説を残したこの海は
果てしないわけじゃない
ゴールがないなら
世界一周して帰るのもいい
辿り着いた先に宝物があるんじゃなくて
辿り着いたことが宝物だから
何もいらないんだ

眩しさに目が覚めた
明日の日の誕生に立ち会った
両手で作った望遠鏡
覗き込んだ明日の光
 
目的地を見つけた
この手に勇気を握りしめ
希望を掴んだ


自由詩 たった一日の航海日誌 Copyright 遊僕民 2009-07-10 10:59:07
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