おもしろ饅頭
あおば


ご亭主、これ、おもしろいね
面白い味だしているねえ
失礼な表現とも気づかずに
平らげてしまう今日のお客さん

一切の証拠は残さない
レシピは私の頭の中に書いてあり
お客さんには知らせない
地下室の冷凍庫から先代の残した化石色したおもしろ饅頭とりだして鶏ガラスープに放り込み
お客さんの目の前で
生麦、生米、生卵
生海老、生肉、生魚
生野菜の天麩羅と
新鮮な匂いの材料をぶち込んで
ぶつぶつとぶっきらぼーな生返事を繰り返し
気に食わない客はいびりだす
常連は素直な味の分からない人たちばかりなので
これ 面白いね言いながら
パクパクパクと召し上がる
私にだっておもしろ饅頭ともみじ饅頭の違いなんか分からない
売り残したもみじ饅頭を先代が冷凍庫に隠しておいたのを
おもしろ饅頭と名前を変えて鶏ガラスープに溶かしたのが唯一の創意工夫なので
もったいぶって説明なんかしない
喜んでくれる客だけを相手に残し
味の分かるうるさい客はいびりだす






自由詩 おもしろ饅頭 Copyright あおば 2004-09-05 07:06:41
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