手足と私の境目
uwyeda

なんとなく眼を見開いたときには
すべからく物事が終わりに向かっていて
今まさに今日を始めようとしている私には
とてつもなくこの空間は不似合いだった

起きてすぐの下がりきった私の声帯が震えて
寝てる間にひどく年輪を重ね、おはようとのたまったが
今日は聞き手に回った目覚ましが、きょとんとした顔で見返したので
私とこの空間とのずれをぐいっと押し広げた

さぁ、今日はもう動くことはあるまいと
高を括っていた手足がむち打たれて
なんとか隣の部屋まで這い出したところで
私はテレビを付けてしまった

ああ、すべからく今日が終わろうとしている。

近隣の住宅では既に
今日三度目の食事が支度されているらしい
不平不満を言わぬ、人間の出来たお腹をなでてやり
惰性で服を着替え靴を履き、静かに玄関の戸を開ける

我慢強い私のお腹と、今日は晩酌をするつもりである。


自由詩 手足と私の境目 Copyright uwyeda 2009-07-09 00:36:16
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