七月の舟
石瀬琳々

七月は一艘の舟
僕らは詩の上で旅をする
オールは持たず自在にすべってゆこう
喜びも悲しみも傍らに従えて
まだ陽はあんなに高いのだから


指を浸せば波紋の向こうに
雲は流れ 陽はきらめき
ゆらりとかしぐ青い空も見えるだろう
僕らの言葉はまだ拙いから
この幸福を形にする事は出来ない
せめて響き合う何かをいつも温めて


ごらん沿道には夏草がびっしり生い茂り
風が首筋を撫ぜてゆくその光の先で
君が笑っているような気がして
なぜだか切なくなるんだ
君はあれから大人になったかい
すました顔で一人歩いているのかい


僕らは迷ったり悩んだりつまずいたり
今も傷だらけになって漂っている
水底にきらきらと沈んでゆく
小さな塵芥ちりあくたにさえ涙を流したりして
だけどそう 顔を上げていよう
まだ陽はあんなに高いのだから


七月は一艘の舟
僕らは詩の上で旅をする
時々は冗談を言って笑い合おう
時々は寄りそって手をつなぎ合おう
例えその指が近くにないとしても




自由詩 七月の舟 Copyright 石瀬琳々 2009-07-08 13:36:59
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
十二か月の詩集