「愛生」(あいおい)
月乃助

水の中でしか 
  生きられないと 
    思っていた
        日々  
きみの
ゼリーの肌に最初に触れた せつな
素人の二人が 不器用に
一つになって
創造が始まった  夏

プールへ続く学校の
モック・オレンジの花が咲き香っていた 坂
を、息をきらせて上る 
僕らの細胞分裂は、
静かに 進行し

もう、きみも僕も
失い ただ、
あらたな 夏の嬰児が生きづく

それはもう きみであり、僕のはずなのに、
別な誰か

そして 水に生きる その子は
しっかりと 目を閉じ
耳だけは ものおとに 澄ませ
水をいつか去る
夢を 見ている



自由詩 「愛生」(あいおい) Copyright 月乃助 2009-07-08 09:54:16
notebook Home 戻る