「カブトムシ」
ベンジャミン

カブトムシの眼はきれいだ
黒い真珠のようだ

あるいは透明な膜でつつんだ
何かの宝石のようだ

(動かなくなっても)

まるでずっと何処かを
見つめているみたいだ

動かなくなる少し前
必ずと言っていいほどカブトムシは

(カブトムシに限ったことではないけれど)

六本の脚をきれいに組んで仰向けになる
最後の力を使いきって

(仰向けになって動かなくなっても)

まるでずっと遠くの何処かを
見つめているみたいだ

それが来年の夏だと思うのは
ひどく勝手な妄想なので

僕は僕には見えない天国みたいな世界が
真珠のような 宝石のような
あの黒い瞳に見えていればと

(本当は瞳というのもちがうのだろうが)

仰向けになって動かなくなった
カブトムシの眼に映っていればと願う

すべからく僕もまた

いつかそういうときが
自分に来るということしか知らないのに


自由詩 「カブトムシ」 Copyright ベンジャミン 2009-07-07 22:49:20
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