あおむし
銀猫

草いきれと湿った地面の匂いがする
(夏だ)

こっそり張られた蜘蛛の巣を
黙って許すことにした
いのち、を
思ったわけではないのだが
今日はこの国や
内包する宇宙にも
とりわけ関心がなく
眠りを貪っているうち
羽根を失い
アオムシになったらしい

きっぱり残った触角で
棘をよけながら
からだを伸縮し
この世を這っていくのが
(ゆるり)
(のらりくらり)
約束事だったように
ごくふつうのことだ

アオムシは思わない
しあわせについて
あるいは明日について
(ゆるり)
(へたり)

不意を突き、
鳥に呑み込まれても
きっとそれも約束のうち

アオムシ、短く、夏。




自由詩 あおむし Copyright 銀猫 2009-07-06 23:13:34
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