asylum
塔野夏子
白い部屋 白いベッド
時計の針だけが 静かに動いてゆく
私は此処に
囚われている それとも
護られている
開くことのない窓から
中庭を見やる あかるい芝生に 木洩れ日が
揺れている 遠い日の記憶が 微笑むかのように
何故 私は 此処に来た
そして 何時まで 此処に居る
目をあげれば 窓の外の空が青い
きりもなく青くあかるい
けれど 何処へも 動き出さない
動けない 私も 私の心も
白い部屋の 白いベッドに坐り
うつろな呼吸を くりかえすばかり
時計の針だけが 静かに動いてゆく
閉ざされた此の場所で 私ができることは
祈ることだけ 祈るあてを持たないままに
中庭をかすめて 小鳥が過ぎる
遠い日の記憶が ふいに きらめきひるがえるかのように