「なかみはなにでできているの？」
幼い子が私に聞く

着ぐるみに入っている私は
その問いに答える事は出来ない

おしゃべり厳禁とアルバイト規約にあったから

「あなたのなかみはなにでできているの？」

だからその問いには答えられない

「しゃべられないの？」
コクリと頷くと彼女は納得

「じゃあ、うんか、ううんで答えてね。」
うん

「あなたのなかみはにんげんなの？」
ううん
「じゃあ、ないぞうがはいってるのね？」
内臓って・・・
ううん
「じゃあ、くうきがはいってるの？」
ううん

ぱふぱふとお腹を触って
ぐるりと周りを回って

「きかいでうごいてるの？」
ううん

「もしかしてじぶんでもわからないの？」

そういう事にしておこう
うん

「じぶんでじぶんのこともわからないのね、かわいそう」

そのセリフは何度も聞いたな
確かこの前見舞いにきた人も同じ事を言ってた

知らない人から物を頂くのは困ります、と
見舞いの花を返した時だ

その人は泣いていたな

どうして私は病院に居るのだろう
見慣れた白い天井を見つめてつぶやいた・・・

「ねえねえ、なかみはなにでできているの？」

次に聞かれたら内臓って言ってやろう

そうして私はまた眠りにつく