なき声
歌川 至誠
鳥は
空を飛べるのに
なぜ鳴いているのか
あんなに苦しそうに
だれかを追いかけていて
だれかに追われていて
鳴いているのか 鳥よ
わたしだって同じ
こんなにも求めている
それでいて
何一つ掴めないまま
いらだちやさびしさに捕らえられそうになるのを
振り切って
振り切って
空が飛べたらなあと思うの
子どもみたいなわたしは
でも そのまえに
なけていないなあと思うの
子どもみたいに
あなたみたいに
あなたは空から逃げたくて
わたしは空に逃げたい
鳥
あなたを自由と呼んだことを
詫びるよ
わたしも一度だけでいい
泣きたい
だから横切って
どうか横切って
飛んでゆけ 鳥よ
わたしのなき声のうえを
踏んでゆけ 人よ
わたしの悲しみのうえを