「海にかえる」
ベンジャミン

海に行こうと決めたのは

季節の中に飛び込むためでも
まして楽しく泳ぐためでもなく
日常からあふれた出来事を
ほんの少しこぼすため

からだの中の水分が
外へ出たいと願うのを
悲しみという言葉で流すには
小さな部屋ではせますぎるのです

砂浜を歩きながら

遠くからは青色に見えた海が
手のひらの中では透明だったので

そこにぽとりぽとりとかえす
その一粒がほほをつたって
口もとに流れてゆくとき

それが

生まれる前から知っていた
あの海の味と同じことに
少し安心しながら


自由詩 「海にかえる」 Copyright ベンジャミン 2009-07-03 23:34:11
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