「初枕」
月乃助
まどろみは とうとう
流れ 流れ 夢をなう
漂い着いた 海峡の夏に
覚めきれぬ
想いのひらを あゆむ
深遠なうみの果て
空のはしを ちぎった 白いウミネコが、
つばさを止めて 飛び去る
痩せた雲の下で
そこだけ
覚醒する
硬質の夏の背
すでに、焼け終わった
紫煙の薄暮
灯台のあかりは
きれぎれ
訪れる夜のとばりに
涼しげに きみの横顔をさそう
潮のかおり
海峡をわたる 夏の夜風は
もどれない
あの日の それ
衣を変える今日の
そっとため息をつく 浜辺は
果てのない 闇の始まり
手にあまるいくつもの
夏の 夜を抱きしめ
うすい胸とやわらかな背の
小さな吐息に 力がぬけて
あの夜
幸せと、一緒に願った星が
しずかに
浜に降りて来た