鳩砲
佐野権太

僕たちは行進する
雨と雨と雨の合間を
かなしみの残る青空に
バシュポン
圧縮した空気は開放され
白い弾丸は
砲の初速を逃れた彼方で
小さな羽を広げる

あの
遥か積乱雲と日輪草の
見つめ合う辺りに
バシュポン
風を掴んで
誘導弾のように
大きくスライスしてゆく

ジャミング
大変だ、鳩が詰まって
ぐるぐる鳴いているよ
いけない、いけない
点検を怠るな

僕たちは前進する
草と草と草の隙間を
指を切るなよ
ああ、いわんこっちゃない
衛生兵、衛生兵
バンドエイドを持ってこい

*

やあ、ついた
丘の上のトーチカ
見ろよ
これが三日間戦争の残骸だ

覗いて見ろよ
貫通した銃弾の穴から
射し込んだ光が
小さな花を育てている

僕たちはいま
この軟らかな砲でもって
互いの心臓を愛撫する

咆えろよ、鳩玉
バシュポン
できるだけ爽やかな角度で
バシュポン
ここがいちばん
見晴らしがいいんだ







自由詩 鳩砲 Copyright 佐野権太 2009-07-02 09:50:29縦
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