鳩砲
佐野権太
僕たちは行進する
雨と雨と雨の合間を
かなしみの残る青空に
バシュポン
圧縮した空気は開放され
白い弾丸は
砲の初速を逃れた彼方で
小さな羽を広げる
あの
遥か積乱雲と日輪草の
見つめ合う辺りに
バシュポン
風を掴んで
誘導弾のように
大きくスライスしてゆく
ジャミング
大変だ、鳩が詰まって
ぐるぐる鳴いているよ
いけない、いけない
点検を怠るな
僕たちは前進する
草と草と草の隙間を
指を切るなよ
ああ、いわんこっちゃない
衛生兵、衛生兵
バンドエイドを持ってこい
*
やあ、ついた
丘の上のトーチカ
見ろよ
これが三日間戦争の残骸だ
覗いて見ろよ
貫通した銃弾の穴から
射し込んだ光が
小さな花を育てている
僕たちはいま
この軟らかな砲でもって
互いの心臓を愛撫する
咆えろよ、鳩玉
バシュポン
できるだけ爽やかな角度で
バシュポン
ここがいちばん
見晴らしがいいんだ