くにゅくにゅ列車
たもつ

 
 
くにゅくにゅ列車が
小さなバス停にやってきて
ダチョウを三羽乗せて行った
ダチョウたちが仲良く
キャラメルを分け合っているのが
窓の外からも
なんとなくわかった
何も無い妹の手を引いて
僕は軒下の連続を歩く
途中、雑草のようなスミレの花を
摘んで帰った
母はたいそう喜んでくれて
優しく痩せた手で新聞紙にくるみ
これからも大切にしてくれるにちがいなかった
疲れたでしょう、と
母はバターとスプーンを持ってきてくれた
血の味がするから、と
妹は少し嫌々をしたけれど
血は味がしないんだよ、と教えてあげると
一匙すくって舐めた
大きくなったら何になりたいのか聞くと
ひとつ
と妹は言う
ひとつ、は割り切れないから
幸せも不幸せもないでしょう
と習いたての算数を言う
ゼラチン質の夕日が差し込んで
言葉だけが
いつもでもどこまでも静かだ
ふと薄暗闇の向こうに耳を澄ますと
僕ら三人が
くにゅくにゅ列車に乗り込む
音が聞こえてくる
 
 


自由詩 くにゅくにゅ列車 Copyright たもつ 2009-07-01 22:11:05
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