おなじ色を見ている
鈴木まみどり

しばし無口で
麦茶を
からりおんころんと飲んでいたら、

だって、ぼくは
指先で色がわかるんですよ

と、爪先とか背表紙とか触ってきた

青いですか?
青いです
すごく青いです

ふうん、

虹とか銀河の果てとかに
指紋、つけてみたいですね

あ、あ、ぼく、あります
え、どんなでしたか?
実は、
虹って一色だったんです

青いですか?
うん、青い青い
赤くないですか?
うん、赤い赤い


ピンクはぬるぬるとしていて
茶色はぼろっと崩れそうになっていれば
カンペキ!


ところで、

と、爪先を噛んだ

ところで、
銀河の果てのほうは
何色だったと思います?

きっと黒ですね
沈黙は黒ですから

ふふん、鼻で息して、
目をつむって、
上唇を一回舐めて、

黒でも白でもありません
しかしながら
黒でもあり、
白でもありました

なにごとも吸いこんでいく黒と、
スパークする白です

眼鏡をかちゃりと掛け直した

いいなあ
今度は一緒にどうですか
本当ですか
行きましょう行きましょう


庭先にくるくるんと咲いた朝顔が
笑っている
花弁を指で擦って、

紫でしょうか
残念、
赤紫です
紫でしょう
あか、紫です

笑いながらむきになる

ホースの先をつぶすと、
ほとばしる水しぶきに虹が光ったので、

つかまえましょう

ふたり
躍起になった


自由詩 おなじ色を見ている Copyright 鈴木まみどり 2009-06-30 23:15:34
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