「氷河の先」
月乃助
迷質な氷はかたまり
時に 織りこみ
いくえもの波形をひしめく
たいらかになって 眺める日
ほのじろく
透きとおるロック・フラワーの反光
水凍された海峡は
北緯48°のあたりまで夏を
閉じ込め
いつのまにか進化をやめた魚たちの
まどろみを 赦さぬ 氷海
滅びをまぬがれたヒト族の
秀逸のものだけが、
あえやかな陽の収受を歓喜し
カリブーの肉を喰らって 生き続ける
文明の しののめ
駅のコンコースをながれる人波
ビルの群れ
楽をひびかせ行進するパレードの車列
知恵を惹起し 拾遺するもの
それがため、
それなれば、
革袋にぬるい獣の味がする
よどんで 溶けた氷の水を口にし
氷の時代を 生き残った
それが
我ら
ヒト