「氷河の先」
月乃助

迷質な氷はかたまり
時に 織りこみ
いくえもの波形をひしめく

たいらかになって 眺める日

ほのじろく
透きとおるロック・フラワーの反光
水凍された海峡は
北緯48°のあたりまで夏を
閉じ込め
いつのまにか進化をやめた魚たちの
まどろみを 赦さぬ 氷海

滅びをまぬがれたヒト族の
秀逸のものだけが、
あえやかな陽の収受を歓喜し
カリブーの肉を喰らって 生き続ける

文明の しののめ

駅のコンコースをながれる人波 
ビルの群れ
楽をひびかせ行進するパレードの車列

知恵を惹起し 拾遺するもの
それがため、
それなれば、
革袋にぬるい獣の味がする
よどんで 溶けた氷の水を口にし
氷の時代を 生き残った

それが
我ら
ヒト


自由詩 「氷河の先」 Copyright 月乃助 2009-06-30 12:48:06
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