ぽつり
麻生ゆり
ぽつり ぽつりと
雨が小さく落ちてくる
いまだ線にならない幼い雨は
歩いていた人々の足を速くさせた
あまりにも突然のことだったので
傘を持つ人は少なく
みんな冷たい思いをしながら
仕方なしにその中を進む
また天気予報が外れたね、と
文句を言う人も当然
徐々に身体が濡れていった
そんな中私は
自然に身を任せ
水滴が服ににじむのを
当たり前のように受け入れていた
見上げると
白い空のところどころに
灰色の染みのような雲が
風にあおられ流れているのがうかがえた
それから下を見てうつむくと
ぽつり ぽつりと
涙が
出た
雨とごっちゃになりながら
私の涙は落ちてゆく
こんなに心苦しい雨はないと
ぽつり ひとりつぶやいて