さよならスーパースター
吉岡ペペロ
デンジャラスをとにかく聴きまくっていた
スリラーにもバッドにもない突き詰め感に圧倒されていた
硬くてぶっ太い乾いたサウンドを休みの日にはフルボリュームでかけていた
ひとりの女はそれをいやがった
ひとりの女はそれになじんでいた
ひとりの女はたぶんがまんしていた
デンジャラスにはなにかを突破しようとする強く持続した意志が漲っていた
日曜日の朝はいつもそれでスタートだった
あの頃俺には女が三人いた
携帯電話のない留守電しかない牧歌的な時代だった
また会社の寮だったからそんなことも出来たんだろう
ひとりの女は俺と浮気した翌朝だった
ひとりの女は俺と幸せを夢見た翌朝だった
ひとりの女は疑心暗鬼を静められた翌朝だった
デンジャラスをとにかく聴きまくっていた
スリラーにもバッドにもない突き詰め感に圧倒されていた
硬くてぶっ太い乾いたサウンドを休みの日にはフルボリュームでかけていた