『粗暴な月と受動的心中』
Leaf
それはそれはとても空疎な事を露呈したわけです
階段をよちよち昇る自分のその後ろ姿をただ眺めていた訳じゃない
荒れ狂う波動にただ溺れたい訳じゃない
知る事の意義を肌で感じたいだけなのです
まだ誰も行った事の無い月への憧れみたいなものなのです
その未踏の月は夜更けに暴れ出し
自らの無能さを暴きだす
自己陶酔に陥っても
別に歓声を毛嫌いした訳じゃない
頷くばかりで満たされるとも思っていない
誰とも会話の空虚さがそこにあって
誰とも触れ合えない苦しさが裏返って
誰も救われない救えない痛みがそこにあって
固唾を飲んで見守るほどの苦悩を知った積りで
嗤ってみたけど頬は引き攣って
辛苦の比重を計る低俗な自分に絶望して
いつの間にか受動で居ることに落ち着いてしまったわけです
言葉を交わすその意味をもう捨ててしまったわけです
そして日が暮れて
静寂と共に月が暴れ出し
さあ、苦慮しなさい、そして生み出しなさい
と嗾けるのです
脳で作り出した虚構は形にしないと意味を為さないのです
だから鞭打ち続ける月の粗暴さは実は床しいのです
何故って
実は誰も月に行ったことないのだから
それ以外のどれも不毛に思えて仕方ないの
そう言い遺して彼女は消えた
BGM:青白い月/fra-foa