はねるひと
恋月 ぴの

傘はどうしたの?
由紀さんに言われはじめて気づいた

昨日買ったばかりの雨傘
ガーリーとは思いつつも華やかなレースに一目惚れしたんだよね

教室に置き忘れたのじゃ無いだけは確かなんだけど

雨上がりなのに蒸し暑い夜道
さっきまでの身振り手振りが嘘のように手持ち無沙汰で

雨傘ぐらいじゃ届け出てくれないよね
他所ではあまり見かけない色合いの傘布がお洒落だったのに

どこに置き忘れたのだろう

頼りないほどに細い銀色の軸はコルセットのような親骨を身に纏い
なんとなくセンチメンタルで
危うい物腰は悲恋への憧れなのかな
とう巻きの手元には皮製のタッセルがあしらわれていた

今頃は優しいひとに拾われて
私の手元にあるよか幸せになってくれるとうれしいけど

どぶ川に打ち捨てられていたりしたら可哀想過ぎる
誰がって

もちろん一目惚れした雨傘でもあるし
そんな雨傘をうっかり置き忘れた私自身だったりする

どうか幸せになってくれい!

赤ちゃんを置き去りにした母親の心境に似たものを覚えつつ
あの辺りにかぐやは落ちたのかなと雲間の月なんて仰ぎ見たりした



自由詩 はねるひと Copyright 恋月 ぴの 2009-06-23 22:11:23
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