ひまわり
北街かな

むしを食べ 手指を舐め 詩思をうたう
飢えた怪物のような向日葵だ
仲間外れの罠にもかからぬふりで
グラウンドを睨んで揺れている

なまぬるい呼気を吐却して
腫れぼったいくちびるから
高らかに咲いて
生きて 死のうとしてみせる
整列と唱和の大好きな向日葵は
顔いっぱいの迷路歯でざりざりと俗欲に齧りつき
むさぼり、飲み下してから
うっすらと旨みを知り また咥え 砕き
血肉細胞にかえている
汗ばむ赤白帽をドクドクと滾らせ
すべすべのゼッケンを波々と泳がせ
その身を打ちたてようと揺れているのだ

五時間目の異郷彷徊に混濁したまま
悲鳴のような西日に焦がされ
教師のせなかをピストルで狙う
生まれたままの殺意を装填して
捕捉、射撃準備
挙手、自白、着席

向日葵は すなおに学び 健やかに育とうと
鉄棒に巻きついて 雲梯に絡んで
はしり ひらき とじたがり
ゆれて ゆさぶられて ゆれる
表皮も 内臓も 未熟な思想も ゆらり
ひらひらの手足も ひらり
足を釘付けされたまま
飛ぶまねをしてみせる

顔ぜんぶで噛み砕き食べ残して 拾い食い
吐き散らかし 泣きわめき へし折れ しおれ
忘れたころに吸水し
しゃんとはするが
くちは閉じない
涎をしたたらせて むしをたべ
詩思をうたって解をもとめようとする
なんと、満面の花弁じゃないか
屋根よりたかく背をのばし
生きて 死のうと
ひらき とじてゆこうとしている

その雄雄しく若き向日葵に
なんのむしを食べているのかと聞くがいい
お前と、あいつと、ぼくと。と
睨むように揺れてみせて 溌剌と答えるだろう


自由詩 ひまわり Copyright 北街かな 2009-06-23 21:38:43
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