緑夜
木立 悟






家と壁と人が消え
庭が庭につながり
あふれている


どこからでも見えるほどの
巨きな建物に
たどりつけない夢から覚め
床の上の静けさを見つめる


背中だけの礼をもらった
忘れてしまうのでしょう と
言われたようだった


浪と曇が同時に動き
何かを新たにはじめようとしている
音の影 そして
音の影


片方の胸の目が痛い
片方の目の上の目をつむり
手のひらと咽の目をひらく


雲間の草の星
陰にわずかな
花が見える


藻の光が廻りながら
朝と灰に近づいてゆく
舟に根づいた楽器が
声と潮に運ばれてゆく


庭と水辺をすぎるもの
足跡から足跡へ点滅を置き
衣と鱗を脱いでゆく






















自由詩 緑夜 Copyright 木立 悟 2009-06-23 20:23:16
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