恋人
小川 葉

 
 
手をつないで歩く君が
息子である前に
恋人のような気がしている

生まれた時に一目惚れして
キスしたり
抱っこしたり
一緒にお風呂入ったり
この頃は肩車がお気に入りの
恋人である

プレゼントするとよろこんで
贈った以上に
うれしい言葉を贈ってくれる
泣くほどに
君は僕の恋人だから

でもいつか訪れる
かつて恋人だった
君のおじいちゃんと僕とが
父と息子という
言いようのない距離を隔てている
きっと君との間にも

キスしたり
抱っこしたり
一緒にお風呂に入ることは
できるかもしれない
けれど肩車なんて
もう一生してもらえない

何よりも
伝えたいことや
してあげたいことのひとつひとつを
プライドなのか
照れなのか知らないけど
贈ることが難しい
そんな時が
いつか君との間にも

想うほどせつなくて
今が恋しくて
あの日の父と同じくらい
君に恋してしまう
 
 


自由詩 恋人 Copyright 小川 葉 2009-06-23 03:56:49
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