階段
望月 ゆき

むかし むかし 


パイロットのきみ は
大きくなったら
ひこうき になりたかった

運転士さんのきみ は
大きくなったら
でんしゃ になりたかった

宇宙飛行士のきみ は
大きくなったら
ロケット になりたかった

飼育係のきみ は
大きくなったら
キリン になりたかった
ゾウ だったかもしれない

サラリーマンの半分 は
大きくなったら
野球選手 になりたかった

ぼくは、といえば
大きくなったら
おとな になりたかった
たぶん みんなそうだったろう


むかし むかし


ひこうき になりたいきみが
パイロットになりたい、と言い

でんしゃ になりたいきみが
運転士さんになりたい、と言い

ロケット になりたいきみが
宇宙飛行士になりたい、と言い

キリンあるいはゾウ になりたいきみが
飼育係になりたい、と言い

野球選手 になりたいみんなが
野球を忘れ
あるいは 捨てて

おとな になりたい
ぼくが
みんなが
おとな にはなりたくない、と
言った とき

そのときが、きっと
そのときが、きっと 
きみが
ぼくが
みんなが


階段の一段目 を
のぼりはじめたとき
なのだろう 




自由詩 階段 Copyright 望月 ゆき 2004-09-03 01:54:00
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