しみ
モリマサ公
「日常という名まえのスペクタリズム?」
そういうのがすでに
定着したニュータウンになにげなく灯ろう
白熱球と蛍光灯の下の
テーブルと人数分の椅子の数を数えて
寄り添いみんな一つの影になろう
等身大のままキーをさしこみドアノブを回転させよう
形式張ったトーンの「ただいまー」と 「おかえりー」
つーか
これこそがはかなさの舞い散る夢なんじゃないかしら
三次元たちのハーモニー
繰り返されたからだから飛び起きるたびに秒針は
刃物じみたせまりかたで喉元をかすっていく
コンビニもファミレスもからっぽなまま地面の上を滑るように進んで
ノーティスボードで色あせてくガラスの向こうの匂い
鮮明な家族の写真や衣服に
もう今の俺たちには人ごとのように絶望や希望が宿る
妊婦たちの膨らんだ腹や
ブルーシートの中に放置された寝袋の温度に
重なりながら四次元のベクトルを選択する
空き缶みたく実にポップでカジュアルに蹴飛ばされる未満児たちの
ウォシュレットでケツを清潔に保持する両親の幼少時代に何があったのか
俯瞰という瞬間にすら星たちは気が狂ったように回り続け
太陽はもっともみぢかな孤独としてさかんに燃え続け
輪郭をなぞりたいだけの腕が幾本も長く伸びていく
すでにどこもかしこもの今が地上のあらゆる場所で崩れ落ちて
都合のいい未来と過去におきかえられていく
消え入りそうなくやしさをドアの外に待たせ
ベージュ色の皮膚を一枚一枚音を立ててめくりながら
良く聞け
ここはもう今じゃない
未来
良く聞け
ここはもう過去だ