カッティング・フライヤの空中工作 《ハサミと糊をご用意ください》
北街かな

裁ちばさみの刃にヒカリさすシャキン
切っ先さしこんでみた、いちめん白紙の大高原を
波風たてて無理にとおして道理もひきこみ縫いこんで
頭痛も続くわ関節に激痛!
キリコミ線だけ辿って渡るの

まだ なんぴとにも形をあたえられぬ
ほっとかれた地図のそとがわを見つけたわ
永遠とか無量劫のすきまからドサクサまぎれて
てきぱきと工作開始しちゃうの
思うままにしてみせる

べろりびりびり引き離した裾野を端からぎゅう・ぎゅう掴み
デコボコの凸にハサミ振りおろして 断崖ガケ下 さそわれて波ざぱん! いい感じで
斜め45度の機械的連続寸断もやっちゃうの 電源オン・オフの限りを食らえ
じゃっかん顔面蒼白、だけど欲求不満のディストーション《いわゆる叫び》おわゎわん

言葉を吐こうとしたら、
声帯を吐いちゃうし…

はさみはシャカシャキ・シャラサササ
いたみはピキギン・ズサギャギャぎゃ
それ幻聴
視界は猛烈に隆起して変調し手なんて全然まにあわない
そんなところで接着しないで!
そんなふうにソコの切断面を曲げたり切りこんだり広げるとか
信じられないダメやめて

気づけば季節風のはやさで高原を超速スクローリングしてるのね
あれもそれも色めいてツヤめいて主張しだしてばかみたい
生えたと思った木が枯れてるわ
あっちこっちの自律型ペーパークラフト走るし食いあうし愛しあうしパンチにキック
単なる小さな竜の子が
純白の羽根を縫いこまれてだいぶ挙動不審
知らないあいだに飛んでみせるのね
高みはキラキラン・シャラランラららら…
鷹は海を見たよ 夜になる

さっきからさあ地上3000Mで呼吸の最中 ずっと足首つかまれてて
足元には眼鏡でおさげの新人類ちゃん趣味は読書なのに 凄い握力
敬愛する教授の助手席で嬉しそうに光学的幻視のいいところ
雲間にきてまでみだらな研究してる
そんなに好きなんだ
糊の量と接合のチュチュッギュウン・ロロロロロロロロろろ…
空気も薄いのによく頑張る
裁ちばさみをシャカン・ちょきんして
幸せなんてアホかと言ってみた

アシッドレインとケミカルスモッグあざやかなる虹色遊園理想郷
ああ じき陸地の切り口も閉じてゆくわ
間に合わないなら線を引いてね
死ぬまで消えないくらいの深く確実な線を引いてね
引きすぎて理解も及ばなくてもいいのそれでも線を引いてみせてね?
記号を刻んで真っ赤に腫れてぶざまに零して
隣人の二の舞など決してしないと誓った矢先のキリキリ舞い
世界の途絶に私だけの自由落下!
裁ちばさみは手を離れ
垂直に地上へ
ぴゅう

気づいたら桃色の波うちぎわ ヒカリさす人心の溶けてく最初の海岸で
やりっぱなしのぶんなげ状態どうみても途中 知らないほっとく
やめられなさすぎとか、とめどきも微妙とか…まじ限界
ふぎゃお・キシキシきーん?
だからそれいわゆる幻聴!
まばたきの数だけ抱きしめて!
愛の数だけ切り刻むのよ

どんな時間割でも工作を愛した
のりしろもベロも出しっぱなした
じき高原の破れ目もボロになって・ごみばこ・ポイ
キリコミ線だけ辿って渡るからそれ広げて 押さえて ちゃんと見せて そうよ
鷹は灯台を見つけたの
女の子は愛を定義したの
超大陸はどこにもないの
ぴゅう
ぴゅう

風になったまま泣いてるの
もっと刻まれて吹かれて遠くどこか見知らぬ安らぎに
刺し込まれて接着できるかな
愛の数だけ せかいを変えろ


自由詩 カッティング・フライヤの空中工作 《ハサミと糊をご用意ください》 Copyright 北街かな 2009-06-22 22:06:41
notebook Home 戻る