エロティック接近
みぞるる
薄暗いクラゲのランプの中で
向かい合う僕ら
口の外に投げ出した落とし穴に
僕は嬉々として自ら落ちた
パフェエを食らう君のまつげが
パリンと跳ねて
雲のような肌に浮かぶ唇のふくらみが
わずかに歪んだ
「さようならをしたい」
蓄音機が奏でるジャズは
僕の
接近欲に勝らない
僕らは空白を供にした
僕のことばで満たされすぎた、
ただそれだけの空白を
テーブルに放置された彼女の左手は
血の流れていない白さで
僕はそれに性を感じる
「わかったわ」と言ったのは
君だった
薄暗い照明の下で
ぎらぎら揺れる瞳が
僕は好きだ
今
なんて僕らは近づいているのだろう
肉体的な欲望に囚われた日の
なんと空虚な愚かさよ
君の奥深くに眠る泉で
僕は心地よくクロールをしている
ふゆーん
ふあーん
…
ふゆーん
ふあーん
…
君は
「さようなら」を吐き捨てた
それなのに
その響きをかき消さないように
音も立てずに
君は静かに去った
僕は
あまりにも満たされていた
君を乱す波紋の生々しさに
ふゆーん
ふあーん
…
ふゆーん
ふあーん
…
泉の水が
少しだけしょっぱいと思った
( 今頃 きみは )