エロティック接近
みぞるる

薄暗いクラゲのランプの中で
向かい合う僕ら

口の外に投げ出した落とし穴に
僕は嬉々として自ら落ちた

パフェエを食らう君のまつげが
パリンと跳ねて
雲のような肌に浮かぶ唇のふくらみが
わずかに歪んだ



「さようならをしたい」



蓄音機が奏でるジャズは
僕の
接近欲に勝らない

僕らは空白を供にした
僕のことばで満たされすぎた、
ただそれだけの空白を


テーブルに放置された彼女の左手は
血の流れていない白さで
僕はそれに性を感じる


「わかったわ」と言ったのは
君だった

薄暗い照明の下で
ぎらぎら揺れる瞳が
僕は好きだ


なんて僕らは近づいているのだろう
肉体的な欲望に囚われた日の
なんと空虚な愚かさよ

君の奥深くに眠る泉で
僕は心地よくクロールをしている

ふゆーん
ふあーん

ふゆーん
ふあーん



君は
「さようなら」を吐き捨てた

それなのに
その響きをかき消さないように
音も立てずに
君は静かに去った

僕は
あまりにも満たされていた
君を乱す波紋の生々しさに

ふゆーん
ふあーん

ふゆーん
ふあーん


泉の水が
少しだけしょっぱいと思った

( 今頃 きみは )



自由詩 エロティック接近 Copyright みぞるる 2009-06-20 13:36:36
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