「従容」(しょうよう)
月乃助

 ぽつりぽつり
 滲み出る
 落涙を正米に変えてみる
 なにものも無駄にせぬのは、女の鑑(かがみ)
 それはそれでも、炊いでみれば思い出す過去世の味、
 苦い飯(めし)

 食べきれず
 キッチンの隅より白く置き馴染む

 器に寝かせ、眠りつく
 悲米は人肌の温かさ
 いつしか
 醗酵し酒に変わった大悲吟醸純米酒

 芳香に酔い
 飽きることなく飲みつくす
 飲みつくし従容と横になり
 横になり冗漫の独り言
 まだあきたらぬのなら
 次もまた
 涙の米を酒に変えてしんぜよう
 
 


自由詩 「従容」(しょうよう) Copyright 月乃助 2009-06-20 01:45:28
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